Hail Hail

 

スコットランドのフットボール人気がセルティックとレンジャーズに偏ってるのは理由が

 

ようやく今週末は待ちに待ったリーグ再開ですね。

日本と激闘したロギッチはメルボルンからグラスゴーへの長距離フライト、今週末はお休みかな。

さてさて、今月はカップ戦で2度目のオールドファームが行われます。昨シーズンのスコティッシュカップのリベンジマッチですね。

早くもフェイスブックやツイッターで繋がっているファンの投稿には、試合のチケットをゲットしたと言うものがチケットの画像とともに増えてきました。

このオールドファーム、個人的には4度、チケットを取り3試合を観戦(1試合は延期のため見られず)したのですが、間違いなくヨーロッパでも有数のチケットの取れないプラチナゲームとなっています。

レアルxバルサ? ユナイテッド x リバプール? ノースロンドン? ミラノダービー?

これらの試合も、世界的に人気がありますが、贔屓からではなく間違いなくセルティック x レンジャーズの比ではありません。その理由をいくつかお知らせしましょう。

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理由その1 ダフ屋がいない、あまりチケットが見つからない

 

スコットランドにはダフ屋がいません。いても商売になりません。オールドファーム以外はエジンバラダービーでさえ1万5千人〜2万人規模、さらに5万6万と入るスポーツは他にフットボールとラグビーのスコットランド代表だけ、これでは、毎週末チケット売買に精を出す、なんてことはできないため、ダフ屋はスコットランドに寄り付かないのです。

(ハンプデンパークで行われるアーティストのコンサートやエジンバラフェスティバル、ホグマニーなどでは、いるかもしれません)

そしてセルティック x レンジャーズの試合はセキュリティ上一般販売を一切しない(双方のファンが紛れ込むのを防ぐため)こととさらに、チケット枚数をはるかに超える需要があるため、ほぼシーズンチケットホルダーだけで売り切れてしまいますし、余ってもファン通しのつながりで捌かれてしまいます。
シーズンチケットを買っていない双方のファンにも滅多にチケットは回ってこないのです。だからほとんどのファンはパブで試合を観戦しているのです。

2004年の初観戦のさいは、朝からセルティックパークに張り込み、チケットを探しまくり運良く手に入れることができましたが、相応の行動をしても手に入れられない可能性の方が多いと言わざるをえません。

 

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2011年のオールドファームダービー

理由その2 街を完全に二分し、試合の勝敗で街の雰囲気が一変する

 

同一都市のダービーといえばロンドンダービー、しかもアーセナルとトットナムのノースロンドンダービーやミラノダービーが有名ですが、両方とも都市は数百万人規模の巨大都市です。

一方グラスゴーは、人口80万人と、政令指定都市以下レベルの人口にセルティックとレンジャーズ、が人気を二分しています。
さらに言えば、スコットランドのフットボールの歴史が物語る通り、スコットランドでもほとんどこの2チームしかいないとまでの人気を誇っていますが、実はこれには理由があります。
グラスゴーにはセルティックとレンジャーズの他にパーティックシスルとノンプロを貫き通すスコットランド最古のクラブクイーンズパークがあります。
グラスゴーのあるラナークシャーは、産業革命以降工業の街として盛んで周辺に住む人々はプロテスタントであれカソリックであれほとんどが労働者階級の貧しい人々でした。

レンジャーズは一部の資本家も応援していましたが、ほとんどがプロテスタントの労働者で、レンジャーズ=資本家、セルティック=労働者というのは、一部あっていますが、ファンのほとんどは双方とも労働者階級の人々でした。

もちろんその中で娯楽といえば酒と賭け事と喧嘩とフットボールだったので、グラスゴーを中心として実はたくさんのクラブが存在するのです。
グラスゴー周辺では、ペイズリーのセントミレン、コートブリッジのアルビオンローバーズ、ハミルトンにはハミルトンアカデミカル、マザウェルにはマザウェル、エアドリーにはエアドリオニアンズ、グリーノックにはグリーノックモートン、ダンバートンシャーでは、ダンバートンにクライド、とこれだけのクラブがありますし、過去には消滅したクラブも含め、さらに多くのクラブがありました。
しかし、なぜ地元のクラブがあるのにセルティック、レンジャーズを応援したのか、一つにはこの2クラブが西スコットランドだけじゃなくスコットランド全体の宗教的象徴のクラブだったからです。

今はそこまでではありませんが、昔から宗教的結びつきが生活の中で根付いているスコットランドにおいて純然たるフットボールクラブは残念ながら求心力と魅力に乏しいものでした。

それよりもそれぞれプロテスタントとカソリック、ひいてはスコットランド(グレートブリテン)とアイルランドを象徴する2つのクラブを地元を超えて応援する人たちが圧倒的だったのです。

これは同じようなクラブを持つエジンバラやダンディーでさえも及ばず、遠くハイランドのインヴァネスやアバディーンでも、2つのクラブの影響力は非常に強く及んでいたのです。

1950年代のハイバーニアンや1980年代のアバディーン、ダンディーユナイテッドなど、その時その時でオールドファームよりも強いクラブはあったのですが、そんな時でも二つのクラブの人気は全く揺るがず、毎試合5万人以上、カップ戦ともなると10万人以上を集めるようになったのです。

だから、この試合で勝つと負けるとではグラスゴーの街の雰囲気は一変します。しかもあたかも勝ったチームがグラスゴーの街を占拠するような勢いです。
こんな雰囲気になるのは他にはブエノスアイレスのスーペルクラシコ、ラ・プラタ、もしくはイスタンブール、ベオグラードという名だたるダービーぐらいではないでしょうか。(ゴメンなさい、実はどれも行ったことないです)

そんな街を二分するぐらいの熱狂的で、あるい意味閉鎖的なダービーですから、見に行こうとするならさすがに敷居は高いと考えてもらった方がいいかもしれません。

もちろんチケット会社に頼めば入手できますし、それでも見たいというのであれば、確実に見れる方法としてお勧めします。
しかし、それ以外で、あわよくば定価近くで観れる方法はないか、と言われたらさすがに簡単にはお答えできません。

本当に見たいのであれば、スコットランド人、アイルランド人のセルティックファンの友達を作るとか、現地に行って人脈を作るとか東京CSCに来るとか色々やり方はあると思います。

一試合のためにそこまでというのであれば、やはり現地でなんとかするしか方法はないと思います。
ただたとえ失敗したとしても、近くのパブでファンと一緒に見るだけでも相当の価値はあると思いますよ。

あれ、3つ目の理由はなんだったかな。

まあ今回もそれなりの文章量を稼げたのでここまでとしておきましょうかね。

リーグとしては魅力の乏しいと言わざるをえないスコットランドですが、4年ぶりのオールドファームは、試合の黒ティはさておき、ファンにとっては唯一無二の憎悪しあうも離れられない相手との待ちに待った対戦なのです。

自分のクラブに対する偏愛と相手への憎悪と地域の閉塞性が、類まれなる熱狂を生み出すのです。

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